県サッカー協会の5つの重点目標の1つに「キッズプロジェクトの推進」がある。低年層の取り組みに大きなウェイトをおくが、これは将来を見据えた大計であり大いに推奨したいプロジェクトである。それに係わる多くの人たちの日頃の努力に敬意を表したい。
今回は「大切に育てる」をテーマにした。1976年のモントリオール、1980年のモスクワの二つの五輪の体操競技で合計5つの金メダルに輝いた、ルーマニアのナディア・コマネチ選手のことは、現代の若い人でも名前くらいは知っていると思う。当時、女子体操で世界に君臨していた旧ソ連を相手に、15才で出場したモントリオール大会では、体操競技で初の10点満点を7回も連発して世界の頂点に立ち、“白い妖精”と呼ばれた。
この時代、東欧諸国は国威発揚の手段としてスポーツに特に力を入れた。ルーマニアも例外ではなく、特に体操競技で世界レベルの選手育成のプロジェクトをスタートさせていた。
金メダルを取ったコマネチは終身年金、監督やコーチもその役割に応じて評価をされたが、そこにとどまらずコマネチのカルテには幼児期に、町のクラブで遊ぶ女の子が体操競技の素質に恵まれていると見出したおじさんの名前があり、つぎには、選手発掘の役割を担っていたカロリーナ夫妻と言うように、コマネチ選手が大きく育つために係わった人の名前があり、それぞれの役割に応じて評価されるシステムがあった。
つまり、それぞれの人が豊かな素質を決して無理をせずに、その年代に応じた指導、育成を行うことで15才で世界の頂点に立たせた訳だ。つまり、何を言いたいかと言う事だが。
あまり早い時期から実戦的な練習に終始するのは、素質に光るものがあればあるほど、大切に育てなければいけないとい観点からは疑問視したい。勿論、ボール扱いの基本技や身のこなし、また、ゲームにおける広い視野の求め方を身に付けさせるのが、この時期に不可欠である事は十分承知している。しかし、それと同じくらいに大切なことは成長期のこの時期は、身体造りに必要な栄養と練習と休養のバランスで、疲れを知らないこの時期に休養は必要かと言う点では、サッカー以外のスポーツを楽しむゆとりが格好の休養となる。
熊本のゴルフの女子プロの指導者で、何人ものプロ選手を育てた清元登子さんの話の中で、アメリカで活躍するトッププロの多くは、10~12才頃までに3~4の他競技の経験があり、その人たちの強さはゴルフだけをしてきた人を圧していると言うものだったが、うなずけるし、私も、多くのアスリートとの話の中で同様の話を耳にしている。
幼児期から10才くらいまでに投(サッカーでは蹴る)、跳、走のバランスのとれた選手育成がその後に大きな花を咲かせることになる。この時期に勝負にこだわる指導者や保護者は少し考えて欲しい。昔からの言い伝えにある、3才で神童、10才で天才、20才過ぎればただの人は、まさにバーンアウト(燃え尽き症候)。じっくり時間をかけて日本を代表する選手が育ったとき、本当に賞賛されるのは、その選手の幼児期に携わった指導者である、そんなシステムが確立したとき、世界の頂点が見えてくるのではないだろうか。









